のれんにも使用されている印染めでは主に染め抜きという方法で、お店の名前やロゴなどを印刷します。

印染めは平安時代に戦の際に敵と味方を区別するための印として、のぼり旗などに家紋を施したのが始まりだと言われており、その技術が形を変えて現代に引き継がれています。のれんに印染めを施す場合にはベースに白い生地を使用し、染めない部分に糊を塗布して、その上から色を染める染め抜きが行われます。

例えばお店の名前を糊で描き、その上から黒い染料で染め抜きを行えば、文字の部分が元の生地の白色、その他の部分が黒くなるという見事な仕上がりになります。筆を使って塗布した場合には筆遣いや擦れた部分も再現することができ、繊細な表現をすることが可能です。

職人の技術

作業を行う際には温度や湿度の影響を大きく受けることから、職人の経験や技術、センスが求められるシーンです。どの程度の染料を使えばどのような仕上がりになるのかをイメージしながら、染料の量や薄めるための水の量などを緻密に計算して作業が行われます。このような伝統的な技法によって作られたのれんは、手作業による温もりと風合いを感じられると共に見た者が思わず足を止めてお店に入りたくなる魅力を持っています。

メリハリのある単色やグラデーションも可能

染め分けでは白い生地に染める部分と染めない部分を分けて、上から染料を引き刷毛で塗ることで生地の白色と、染めた部分の色のメリハリのある単色の染めが可能です。単純であるからこそ白地の部分に描かれた文字や家紋などがよく映え、見る者にインパクトを与えます。

一方、染め分けは単色だけとは限らず、複数の染料を使用してグラデーションを作ることも可能です。少しずつ明度が変化する染料を引き繊毛で何度も染め分けをすれば、見事なグラデーションが完成します。

また、3色程度なら対応することも可能で、ストライプやツートンなど平安時代とレトロモダンが融合したモードを構築できるのも面白いところです。染め分けでは全ての工程を手作業で行うことから、染料がほんの僅か染み出して隣の色素と混合されたり、ムラが出てしまうのも独特の味が出ます。

天候や気温、湿度の影響も大きく、その日によって二度と出すことができない色に仕上がることもあります。現代では最新鋭のインクジェットプリンターなどを使用すれば高精度なグラデーションを作ることは可能ですが、伝統的な技法を用いた手作業による温もりのあるランダム性を求めて、敢えて染め分けを選択するケースも増えています。